第118回例会(2018年7月例会)のお知らせ

日時: 2018年7月7日(土) 14時30分から17時
場所: 青山学院大学 青山キャンパス 総研ビル5階 14509教室

ワークショップ
新たなフェミニズムに向けて?──『戦う姫、働く少女』とその後
講師   河野真太郎 (一橋大学 准教授)
コメンテーター   山本 妙  (同志社大学 教授)
    英 美由紀 (藤女子大学 准教授)

ワークショップ概要

講師 河野 真太郎

 2017年7月に出版した拙著『戦う姫、働く少女』は、お陰様で多くの読者を得てきた。拙著の主な分析対象はディズニーやジブリのアニメであり、いわゆるポピュラーカルチャーであった。だが、その分析対象はいわば偶然のもので、拙著で提示した枠組みと問題設定は文学研究一般に応用可能なものだと考えている。実際、本協会が編集し出版した『終わらないフェミニズム──「働く」女たちの言葉と欲望』は、『戦う姫、働く少女』と同様の問題意識をベースとして、ウルフをはじめとする文学者とその作品を論じたものであった。
 本例会報告では、まずは、現在をポストフェミニズムもしくはポストフォーディズム状況としてとらえる拙著の枠組みを紹介し、その上で、そのような状況を超えるフェミニズムとフェミニズム批評の可能性について論じたい。具体的には、例えばセリーナ・トッドの『ザ・ピープル』という新たな階級史の試みを拙著と同時に読むことは、女性と階級についていかなる示唆を与えてくれるのかといった論点、また、フェミニズムのみならず、障害学やバイオ資本主義をめぐる議論など、拙著の延長線上にあると思しき論点も提示したい。その上でコメンテーターの先生方に、拙著の問題提起を受けたうえでの具体的な作品読解の可能性について提起をしていただき、議論を開いていきたい。

コメンテーター 山本 妙

1999年にBBCで放映された1900 Houseから始めて、David LodgeのNice Work(1986)を取り上げる。新自由主義の台頭を予感させながら、その直前で終わってしまうこの小説は、第二波フェミニズムとポスト・フェミニスト世代の間に位置する(と思われる)フェミニストの戸惑いと奮闘を描いている。その思いは、次世代に届くのか。そこから私たちは何を学べるのか。そのような観点から、この作品を読んでみたい。

コメンテーター 英 美由紀

Fay Weldonの新著Death of a She Devil(2017)の読解を試みる。この作品は「女性運動の達成、またその代価の回顧」(The Times)と評される一方、フェミニズムの主体を新たに問い直し、承認と再分配、就労をめぐる困難や男女間の賃金格差といった今日的な問題を取り上げるなど、現在、また今後に向ける視点も含んでいる。そこに、「新たなフェミニズム」や連帯のあり方の可能性を探ってみたい。